ドイツの主要ニュース

疾病保険改革を巡る混乱

   200411日に法定疾病保険近代化法GMGが発効した。患者は四半期ごとに初診料10ユーロを払わなければならない。懸念されていた大きな混乱はなかったが、特に初診料を巡る原則的な問題がまだ解決されておらず、医者と患者の不満は大きい。(2003929日の主要ニュースを参照)

 予防のための歯科検診では初診料を払う必要がないが、予防検診の回数を巡って、歯科医と疾病保険金庫の間で見解の相違があったため、連邦仲裁局が18日(木)、法定疾病保険被保険者は年に2回、初診料なしで予防のための歯科検診を受けることができるという決定を下した。但し、予防のための歯科検診では、歯石をとるだけであれば、初診料が不要であるが、虫歯の治療をしなければならない場合には初診料を払わなければならない。また、初診料未納の場合には、歯科医は1回だけ督促しなければならないが、その後は疾病保険金庫の責任になる。

 一方、眼科医が眼鏡の処方箋に2025ユーロを請求する(被保険者の自己負担)ことを巡る争いもエスカレートしている。シュミット保健社会相は、眼科医は眼鏡のための視力検診に2025ユーロを請求する権利がないとして、被保険者に対して、視力検診料を払わないよう呼びかけた。また、疾病保険金庫は被保険者に、領収書を集めて、疾病保険金庫に提出するよう指示している。疾病保険金庫はその金額と手数料を眼科医から請求するという。眼鏡に対する補助金は廃止されたが(被保険者の全額負担)、眼鏡のための視力検診は疾病保険金庫が引き続き払うという。シュミット保健社会相は、医師会が眼科医の免許を再審査することも有り得ると牽制した。

 連邦保健社会省は、その他にも法定疾病保険近代化法と年金改革法に多くの不明確な点があるため、規定や定義の明確化を図らなければならないことを認めている。例えば、避妊ピル常用者が処方箋をもらうたびに初診料を払わなければならないのか、救急治療の場合の初診料の扱い方、慢性疾患の適用範囲、年金受給者は法定年金以外のどの収入に対して疾病保険料(全額負担)を払わなければならないかなどの問題がまだ解決されていない。また、開業医は、初診料徴収に伴う業務と経費の増加を訴えている。

 シュミット保健社会相は、2004年に平均疾病保険料率を14,3%から13,6%に引き下げることを理由として、初診料導入と自己負担の増加を弁護していたが、疾病保険料率の引き下げが予定よりも遅れる見通しであることを認めた。引き下げの遅れは、疾病保険金庫の大幅な収入減に起因しているという。

 一方、一般市民が10ユーロの初診料を四半期ごとに払わなければならないのに対して、連邦議会議員や公務員(民間疾病保険の被保険者)は年間20ユーロの一括初診料だけ払えばよい。この初診料特別規定に対する批判が強くなっている。社会民主党のブラーゼ議員はティルゼ連邦議会議長宛の書簡の中で、この不公平を是正するよう求めている。キリスト教民主同盟CDUのメルケル党首は、議員にも公務員にも相応に適用するという政治表明を実施しなければならないとして、一般に適用される規定を議員と公務員にも適用するよう要求した。ミュンタフェリングSPD議員団長は、議員と公務員の優遇措置は保健改革の精神に反するとして、公務員と議員の特別規定を改正する意向を明らかにした。また、連邦内務省は、公務員の一括初診料を法定疾病保険被保険者の負担に適応させると表明した。

2004112日)

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