オバサンの独り言

 ミュンヘン日本語補習授業校の卒業式に参列した。近頃、日本では、卒業式で国歌を歌うことや国旗掲揚に反対する教師や生徒が多いと聞くが、ここミュンヘンの補習校の卒業式では、国旗が掲げられ、国歌斉唱があり、「蛍の光る」と「仰げばとうとし」を歌う。私も知っている昔の日本の卒業式がそのまま受け継がれている。日本の卒業式と違うのは、卒業生が日本とドイツの2つの文化の中で成長してきた子供たちだということだ。

 高等部卒業生の中には、幼稚部から数えて十四年間、補習校に通ってきた若者たちもいる。涙を流しながら答辞を読み、先生に、親に 、友人たちに感謝の気持ちを述べる光景には感動した。若者の涙は純粋で美しい。みんなが輝いていた。高等部の卒業式は成人式に等しい。

 親の転勤でドイツに来た子供たちにとって、補習校は友達と日本語で話せる、唯一の安らぎの場だったに違いない。日独両国籍の子供たちにとっては、自分のアイデンティティーを模索する場だったのではないだろうか。

 日本から離れて、距離を置いて日本を見るからこそ、日本の良さと欠点が見えてくる。日本人であることを自覚する。自己のアイデンティティーの基盤になる言語と文化をしっかり認識して初めて、外国に対する偏見やコンプレックスを克服でき、多様性を理解できる真の国際人になれるのではないかと思う。

 補習校の卒業生たちは、将来、日本で、ドイツで、世界中で活躍することだろう。彼らには「国際人的日本人」になってほしいと切に願っている。

2004322日)

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