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連邦議会、老齢所得法案を可決

 連邦議会は4月29日(木)、年金課税と年金保険料免税を中心とする老齢所得法案を可決した。野党のキリスト教民主同盟と社会同盟(CDU/CSU)、自由民主党(FDP)は法案に反対した。この法案は連邦参議院の同意を必要とする。老齢所得法は2005年1月1日に発効する予定である。主な内容は次の通り。

     2005年から法定年金が段階的に課税される。まず2005年は、支給される法定年金の50%が課税される。残る50%の金額は、その人の生涯の税金控除額となる。これは、後の年金引き上げに関係なく、その年金受給者の生涯の税金控除額となる(50%の比率ではなく、50%の金額が生涯の固定控除額である)。課税の割合は2020年まで毎年2ポイントずつ、その後は2040年まで1ポイントずつ加算され、2040年に100%課税となる。例えば、2006年に年金受給を開始する人の場合は、年金の52%が課税対象になり、48%が控除される。つまり、2006年の年金の48%の金額がその人の個人的控除額(生涯の固定控除額)となる。

     2005年から段階的に、法定年金保険料が特別支出として免税なる。まず2005年は法定年金保険料(年間最高20000ユーロまで)の60%が免税なる。免税の割合は2025年まで毎年2ポイントずつ加算され、2025年に100%免税となる。

     2005年から生命保険の税金上の優遇措置が廃止される。但し、契約期間が12年以上で、60歳以降に満期になる生命保険には優遇措置が適用され、収益は「5等分規定」に基づいて課税される(収益を5年間に配分して課税)。但し、この規定は2005年1月1日以降に契約される生命保険に適用される。

     企業年金保険料には、追加して、年間1800ユーロの控除が適用される(全部で4270ユーロの控除)。但し、従来の一括課税はなくなる。企業年金の課税は従来と変わらないが、法定年金に適用する基礎控除の割合が増えるため、企業年金の税負担が増える。

     2006年からリースター年金の保険料と給付は男女同額になる(ユニセックス・タリフ)。既存の契約には適用されない。現在、女性の保険料は、平均寿命が男性よりも長いことを理由として、男性の保険料よりも最高15%高い。

 連邦憲法裁判所が2002年3月に、恩給(公務員)と年金の異なる課税は基本法の平等の原則に違反するとして、2005年1月1日までに恩給と年金の課税を平等にするよう立法者に命じる判決を下したため、政府は新しい老齢所得法の制定を余儀なくされた。同法が成立しない場合には、2005年から公務員の恩給が課税されなくなることから(連邦と州の税収入が年間100億ユーロ少なくなる)、各州政府は税収入減少を避けるために、連邦参議院で同法案に同意するものと見られている。

 連邦財務省によると、2005年から段階的に適用される年金課税により税金を払わなければならない年金受給者は、2005年は年金受給者1420万人のうちの約330万人(特に、企業年金や資本収益、家賃などの追加収入のある年金受給者。全体の23%)に過ぎず、そのうちの約200万人はすでに現在も税金を払っている。大半の年金受給者は、その年金の課税対象になる額が現在の基礎控除額(年間7664ユーロ)を下回っているために、税金負担がない。基礎控除のほか、必要経費控除(102ユーロ)、疾病・介護保険料などの特別支出の控除、一括控除なども控除額に加算される。

 アイヒェル連邦財務相は、老齢所得法では人口統計上の発展を考慮したと語った。同法により、連邦憲法裁判所の判決が経済的に有効に、社会的に受け入れやすく実施されるという。年金受給者の4分3はこの法律の影響を受けず、平均的年金受給者は将来も税負担がない。年金が年間18900ユーロまで(月額1575ユーロまで)であれば、税金を課されないという。また、年金保険料の税負担が軽減されるので、個人的な老後の備えの余裕が出てくると見ている。

 CDU/CSU は、政府が連邦憲法裁判所の判決の範囲を超えて、年金課税ですべての老後の備えを規定しようとしているのは、民間及び企業の年金に対する挑戦だとして厳しく批判している。特に、生命保険に対する優遇措置の廃止や男女同額のリースター年金保険料に反対している。連邦参議院で同意するか否かはまだ決定していない。

20045月3日)

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