オバサンの独り言

 世界的に大きな自然災害が続いた2005年がまもなく終わろうとしている。ドイツの2005年は選挙の年だった。社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権に終止符が打たれ、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とSPDの大連立政権が成立した。そして、ドイツ史上初の旧東独出身の女性首相が誕生した。

Bundeskanzlerin(女性首相)」は、ドイツ語協会の「2005年のことば」にも選ばれた。昔は、「女性首相」は「Frau Bundeskanzler」であった。女性首相は言語的にも注目されたようだ。

 シュレーダー前首相(SPD)とフィッシャー前外相(緑の党)の退場と、メルケル新首相(CDU)とプラツェックSPD新党首の登場が象徴しているように、ドイツの2005年は69年世代から89年世代への世代交代の年でもあった。

 ここ数年間は不況、高い失業率、財政難、社会保険制度の行き詰まりなど悲観的なニュースばかりだったが、2005年末になってようやく、失業者減少、2006年度経済成長予測の上方修正、個人消費の増加などの明るいニュースも聞かれるようになった。総選挙前倒しで続いていた政治空白が終わり、懐疑的に見られていたメルケル新政権が予想外の順調なスタートを切ったので、国民の間にも少しずつ政治への信頼が戻ってきたのだろう。

 メルケル新政権の最大の課題は21世紀の少子・高齢化社会に備えた構造改革だ。人口減社会を迎えた日本も同じ状況にある。私達の成熟した社会は「物質的豊かさ」の限界にようやく気付き始めた。

 戦後60年、日本もドイツも「豊かさ」を求めて邁進してきた。確かに、私達の生活は物質的に豊かになった。しかし、幼児虐待、児童殺害、登校拒否、いじめ、青少年犯罪などのニュースを聞くたびに、私達が「物質的豊かさ」のために払った代償の大きさに愕然とするのである。

 政治は少子・高齢化に対応するために制度を改革しなければならない。私達は、少子・高齢化社会が求める「豊かさ」のために意識の改革をしなければならない。

 クリスマスの日、私は偶然にラジオでアメリカ・インディアンの報道番組を聞いた。その時のインディアンの老婆の言葉が印象的だった。「皆さんは、私達が貧しいといいますが、私達は豊かです。インディアンの伝統の中で生きている私達は豊かなんです」。米国の統計によると、彼らは貧困ぎりぎりの生活をしているのだという。

 あなたは、この老婆のように、「私は豊かな人生を生きています」と自信を持って言えますか? 

 良いお年をお迎えください。

2005年12月30日)

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