オバサンの独り言

 このところ、ドイツでも連日、中国反日デモのニュースが報道されている。「日本におけるドイツ年」や愛知万博で日本が話題になるのはうれしいが、中国の大規模な反日デモでクローズアップされるのは残念なことである。

 ドイツでは、日本が痛みを伴う過去の清算を十分にせず、アジア近隣諸国の視点で過去を考えようとしていないとして、日本の戦後処理の姿勢を厳しく批判する論調が一般的である。民衆の暴力行為は賛成できないとしながらも、反日デモに理解を示している。戦後60年間、ナチスの暗い過去を徹底的に追及し、謝罪して、再び欧州社会に受け入れられたことを自負するドイツだからこそ、日本の歴史認識を厳しく批判することができるのだろう。

 ドイツの子供たちは学校でナチスによる犯罪の歴史を徹底的に習う。ナチスの暗い歴史を絶対に忘れないことが戦後ドイツの使命である。60年間の自己批判なくして、現在のドイツはない。

 ところが、私達日本人は原爆や本土空襲、沖縄戦などにおける悲惨な戦争体験から、加害者というよりもむしろ被害者として戦争の歴史を見る傾向に あったのではないだろうか。戦争犯罪の加害者であることを認識した上でアジア諸国の被害者の痛みを直視する教育が十分に行われていなかったように思われる。

 もちろん、ナチスによる犯罪は戦争犯罪だけでなく、ユダヤ人大虐殺という比類のない大犯罪であり、日本の戦争犯罪と単純に比較できるものではないことを考慮しなければならない。しかし、ドイツの一貫した戦後処理の姿勢から日本が学ぶことはあるのではないか。

 中国の反日デモに対する欧州の反応が興味深い。中国政府が暴力的な反日デモを容認し、大使館や領事館への投石、日本レストランの破壊、日本人留学生への暴力などに対する謝罪も賠償も拒否していることを批判する声がほとんど聞かれないのである。

 いかなる理由であろうとも、暴力・破壊行為は不法行為であり、「愛国無罪」は国際法上絶対に許されることではない。にもかかわらず、欧州が国際ルールを守らない中国を批判することもなく、静観しているのはなぜか。米国に対しては敏感に反応する欧州が中国の不法行為を黙認しているのはなぜか。

 巨大な市場を有する経済大国になりつつある中国との経済関係を有利にしたいがために、中国の人権問題、軍備拡張、環境問題など諸々の問題に目を瞑る日和見主義が欧州、特にドイツとフランスで顕著になっている。だからこそ、日本政府にはもっと積極的に日本の主張を世界に説明してもらいたい。国際社会では必ずしも「雄弁は銀、沈黙は金」ではないのだ。

 歴史に対する認識の違いを克服するには忍耐強い話し合いしかない。韓国や中国が「日本はドイツを模範にすべきだ」というのであれば、韓国や中国も暴力・破壊行為で訴えるのではなく、一方的に友好関係を絶つのではなく、ユダヤ人やポーランド人がしたように、話し合いの場で歴史認識について根気よく議論し、それぞれの国の歴史教科書を見直す共同研究を行うべきではないのだろうか。

 反日デモを機会に、日本の若者が政治的無関心から脱皮して、日本とアジアの歴史を見直して欲しいと切に願う。日本の平和主義とアジア諸国との共存はあなたたちに託されているのだから。

2005年4月18日)

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