オバサンの独り言

 

 いよいよ3月になり、待望の春の到来かと思っていたら、記録的な大雪に見舞われた。ミュンヘン市内の3月5日(土)の積雪は50cmに達し、1942年(73cm)以来の大雪だったとか。週末はバスも市電もSバーンも止まり、かろうじて地下鉄だけが走っていた。ミュンヘン/アウグスブルク/ウルム間の鉄道も完全にストップし、ミュンヘン空港では欠航と遅れが続いた。市内のヘラブルン動物園 は開園以来初めて、悪天候のために一日休業したという。

 日曜日の朝、雪かきをしようと玄関のドアを開けて驚いた。1メートル近くも雪が積もっているではないか。人が歩ける程度に雪かきするのだが、これがなかなかの重労働だ。あちこちの道路脇に雪の山ができたので、路上駐車はできない。駐車していた車は雪に埋もれて、すでに雪の山になっている。というわけで、ラジオでは、「車でミュンヘン市内に入っても駐車するところがありませんよ」と警告していた。ミュンヘンは雪にすっぽり埋もれてしまったのである。

 しかし、突然の大雪にも効用がある。普段は顔を合わせる機会の少ない近所の人たちがみんな外に出て雪かきをしながら、おしゃべりをしている光景には心が和んだ。「自分の家の前だけ」なんてみみっちいことはいわないで、力を合わせて雪かきしていた。お年寄りの家の前では誰からということなく、ごく自然にみんながお手伝いしていた。

 高速道路は事故と渋滞で大混乱だったようだ。一部の道路管理事務所の除雪作業員が労働時間延長に反対してストをしているために、除雪車の出動が大幅に制限されたのだという。大雪にもかかわらず、労働組合は「ストをさらに拡大していく」と強気である。

 労働組合の委員長はテレビのインタビューで、「大雪の最中のストは公勤務者による除雪作業の必要性を人々に訴える良い機会だ」と誇らしげに述べていた。また、ある組合幹部は、「高速道路の渋滞は人員削減を図る地方自治体のせいだ」と批判していた。

 確かに、寒い中、何時間も待たされたドライバーは道路管理事務所による除雪作業の必要性を痛感したことだろう。しかし、「この除雪作業は公勤務者にしかできない仕事なのだろうか」という疑問も沸いてきたのではあるまいか。

 現在、公勤務者(公務員でない職員及び労働者)の労働組合が週38,5時間から40時間への労働時間延長に反対してストを行っている。バーデン・ヴュルテンベルク州の一部ではゴミ収集作業員のストのために、ここ数週間ゴミが収集されていない。労使交渉が進展しない中、シュツットガルト市は民間の廃棄物処理業者にゴミの収集を委託した。この不意打ちにびっくりした労働組合は民間業者のゴミ収集車がゴミ焼却施設に入るのを力ずくで阻止しているという。

 公勤務者が「公」の意味を無視すれば、民間業者と変わらなくなってしまう。労働組合は、公勤務者には「公」の責任があることと、使用者である地方自治体が深刻な財政難に陥っている現状を忘れてはなるまい。今回の強硬なストが地方自治体の公共事業の民営化を促すことにもなりかねない。

そして、労働組合が強いドイツでも、失業率が12,2%の時代には、労働時間延長反対ストに対する市民の理解と我慢にも限界があることをお忘れなく。

 ところで、ミュンヘンでは、ごみ収集作業員のストではなく、除排雪していない道路を大型車が通れないという緊急事態のために、ゴミの収集が今週いっぱいお休みになった。ゴミ収集サービスのありがたさを身にしみて感じるのも3月の大雪の効用か・・・。

2006年3月8日)

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