オバサンの独り言

 

 今日からバイエルン州も夏休みに入った。太陽を求めて南へ南へと移動が始まり、空も道路も休暇に出かける人たちで賑わっている。今年はサッカー・ワールドカップが始まった6月10日から猛暑が続いており、ドイツでもイタリアやスペインのような夏を満喫できると思うのだが、何ヶ月も前から夏休暇を予約している人たちは予定通りに出発するしかない。炎天下の高速道路で渋滞する車、車、車・・・をテレビで見ていると、毎年のことながら、なぜ夏休みのスタートと同時に一斉に出かけるのか理解に苦しむ。

 ドイツ気象庁によると、今月は7月としては1900年に気象記録が始まって以来最も暑かったそうだ。平均気温は22,1度で、過去最高だった1994年7月の21,3度を抜いた。7月の平均気温は過去の平均値を5,2度も上回っている。8月に通常の暑さが続けば、2006年は2003年を破る記録的猛暑の年になるらしい。

 連日30度を越える暑さは室内で仕事をしている人でもしんどい。ドイツでは、一般家庭は勿論のこと、企業でも冷房のないところが多い。最近では、乗用車のカークーラーが当たり前になり、新しいバスや電車、建物も冷暖房を完備しているが、まだまだ冷房は普及していない。 今までは、ドイツには冷房が不要だったのである。

 記録的猛暑の中、屋外で仕事をしなければならない人もいる。炎天下での労働は たいへんだ。そこで、建設産業労働組合は、極暑の時は休業し、冬の悪天候手当て(実質賃金の約60%)に倣った「猛暑手当て」を失業保険が建設作業員に支給すべきだと要求している。

 しかし、湿度の高い日本の猛暑はドイツの暑さの比ではない。炎天下の建設現場で長袖、長ズボンの制服を着て、ヘルメットをかぶって仕事をしている作業員や警備員をドイツの建設産業労組の幹部が見たら、どう思うのだろうか。「人権侵害だ、搾取だ」と訴えるのだろうか。

 暑い日は早朝に作業を開始し、昼休みを長くしたり、極暑の日は作業時間を短縮し、その分を他の日で補うなど、労働時間を気温に合わせて柔軟に配分することも可能であるし、すでにそうしている企業もあると聞く。

 今後は地球温暖化の影響で、気象の変化に合わせたフレキシブルな労働時間制度が避けて通れない課題になるだろう。寒すぎても暑すぎても国に責任を取ってもらおうという考え方は通用しない。企業と労働組合に求められているのは責任転嫁や補償要求ではなく、発想の転換である。

 ところで、医者が勧める猛暑対策は、十分に水分を取ること(一日に最低 3リットル)、お酒を控え目にすること、塩分を含む軽い食事にすることだそうだ。

 もう一つの猛暑対策。晴天の日に映画を見に行く のは物好きだと思われるかもしれないが、観客のまばらな冷房の効いた映画館で 外の暑さを忘れて映画に興じるのはなかなかクールな避暑である。

2006年7月31日)

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