オバサンの独り言

 

 ドイツでは、今年1月1日に付加価値税が16%から19%に引き上げられた。3ポイント の大幅引き上げが消費を強く抑制するのではないかと懸念されていたが、1月に入ってから小売 業が冬物の大安売りをしていることや、付加価値税引き上げに備えて家電品や車などの高価な買物を昨年中に前倒しした人が多かったこと、食料品の付加価値税が7%に据え置かれたことなどの理由から、今のところ消費者は増税をそれほど感じていないのではないだろうか。

 ユーロが導入された ときは同時便乗値上げが多かった。驚いた消費者が一気に財布の紐を引き締めて警戒したため、消費が低下し、景気が冷え込んだ。特に外食産業 がかなりの影響を受けたといわれる。商業はこの苦い経験から学んだようで、今回は価格への上乗せに慎重になっている。

 暖冬のために冬物の売れ行きが悪いことや付加価値税引き上げによる売上急減を避けるため、小売業は大幅な値下げをしているが、2月、3月頃からは価格上昇が顕著になると 専門家は予想している。遅かれ早かれ、いつかは増税の痛みを実感しなければならない。

 連邦統計局の速報によると、ドイツの2006年度経済成長率は2,5%と、2000年(3,2%)以来の最高水準だった。この景気回復をどれだけの市民が実感しているかは別として、統計上は2005年(0,9%成長)に比べて景気が著しく改善している。消費も上向き、失業者数も減少して、全体的に 景況感は楽観的になっている。

 しかし、経済と雇用市場が回復してきたものの、2005年の総選挙で 誕生した大連立政権では、メルケル首相が目指していた改革は減速した。昨年から激しい議論の的になっている疾病保険改革は度重なる妥協の末、与党各党の体面を保つために骨抜きにされた「改革」になる公算が大きい。そのほかの制度改革でも同じような展開になっている。 メルケル首相が常々言っているように、大連立政権下では忍耐強く小さな一歩を重ねていくしかないのかもしれない。

 日本では、ドイツとは対照的に2005年の総選挙で小泉政権が大勝し、思い切った改革 の環境ができたかと思われたが、安倍政権になってからは旧体制を「ぶっ壊す」どころか、旧体制に逆戻りする傾向が見られるようになった。「批判を恐れず行動する「闘う政治家」でありたいと願っている」という安倍首相にはぜひ 有言実行を願いたいものである。

 ドイツも日本も「おんぶに抱っこ」の社会保険制度が限界にきている。戦後生まれで同年代のメルケル独首相と安倍首相は 、エゴ丸出しの既得権益者の抵抗に屈することなく、回復してきた経済を梃にして、勇気ある改革を推進することができるのか。2007年は両首相の指導力が注目されている。改革の日独競争の行方は如何?

2007年1月12日)

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