オバサンの独り言

 

 安倍前首相が退陣を迫られた理由の一つが「政治とカネ」の問題であった。しかし、攻撃の的が民主党にも当てられると、すぐに大物の「政治とカネ」の問題が出てきた。日本の政界は、叩けば、埃が出てくるようである。

 「政治とカネ」は万国共通のテーマだ。ケルン大学のフィナンシャルリサーチセンターが発表した調査結果によると、連邦議会議員を雇っている上場企業は雇っていない企業よりもはるかに高い収益を上げており、株式相場の展開も優っていることが明らかになった。企業にとって議員の雇用は十分に採算が合うらしい。

 同センターの研究者は、今年7月4日から連邦議会のホームページ上で公開されている連邦議会議員の副収入を基に調査した。95人の議員が取締役、監査役あるいは講演者として企業に従事している。その内の28人は上場企業で副収入を得ている。

 議員を雇用している28の上場企業を他の株式会社と比較すると、議員を雇用している上場企業の1株当たり利益は他の上場企業よりも平均で10%上回っていた。株式相場の動向でも議員を雇っている企業は18%も優っている。

 さらに興味深いことに、連邦議会議員が取締役会か監査役会の一員で、年間7000ユーロ以上の報酬を払っている企業の利回りと1株当たり利益は約30%も上回っていたのである。

 連邦議会議員は公共事業の受注や租税上の優遇措置において雇用主の企業に有利になるように手助けをしているのか? 雇用主の企業に有利になるように立法に影響を与えているのか? これらの議員は「国民の代表者」としてよりも「雇用主の陳情者」として連邦議会に籍を置いているのか? あるいは、世間の評判が高いという理由から、成功している企業を雇用主として選んでいるのか? 

 研究者は問いを投げかけているが、回答は出していない。この調査は公開されている2006年のデータのみに基づいている。もっと長い期間のデータを分析すれば、回答が鮮明になってくることだろう。

 ロシアのプーチン大統領を「申し分のない民主主義者」と称えて親プーチン外交を展開したシュレーダー前連邦首相が退陣後直ぐにロシアのエネルギーコンツェルンの監査役に就任したことは記憶に新しいが、お隣の国フランスでも「政治とカネ」が大きなテーマになっている。航空宇宙企業EADSのスキャンダルでは、トップマネージャー、政治家、労働組合トップ、経営者団体トップが「何も知らなかった」と白を切っているが、インサイダー取引の疑惑が深まっている。

 フランスの政治と財界の癒着は有名だ。エリート大学出身者が政治と経済を牛耳っていることに一因があるといわれている。エリート大学で一緒に学んだ昔の友は今も友というわけだ。だから、不正が発見されにくいのだという。

 ある新聞の報道によると、フランスではいかがわしい現金のやり取りが日常茶飯事だとか。財界のスポンサーに豪勢な休暇旅行の費用を出してもらう大統領の国だから本当かもしれない。その大統領は選挙戦では政治と経済における資金の透明化を図ると約束していたが・・・。

 日本では、政治資金規正法を改正して、政治資金の透明化を図ろうとする動きが出てきた。ドイツでも連邦議会議員の副収入公開により(情報はまだまだ不十分だが・・・)、政治と経済の利害関係を透明化しようとしている。欲深い人間の社会では、「政治とカネ」の問題はなくならないだろう。しかし、規則を作って監視することは可能である。まずは、法律の穴を塞がなければならない。

 「国民の代表者」としての使命が「企業の陳情者」としての兼業で損なわれては困る。利害の対立を避けるためにも、議員を雇っている国民は副収入に関する情報を知る権利がある。これは単なる好奇心でもねたみでもない。納税者かつ選挙民である国民の当然の権利である。

2007年10月12日)

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