オバサンの独り言

 

   年末恒例、「今年の言葉」が発表された。2008年の言葉は「金融危機」だ。

   米国で発生した「金融危機」という大地震はあっという間に巨大な津波となって加速的に世界中に波及した。グローバル化した時代に生きていることを改めて実感させられる。リセッションも地球規模に拡大している。

   輸出大国ドイツの主要産業である自動車工業がクリスマス休暇の延長、減産、操業短縮、非正規雇用従業員のリストラを相次いで実施しており、中小のサプライヤーの倒産が増えている。他の産業部門でも景気後退の煽りを受けて企業業績が急速に悪化している。倒産の連鎖が懸念される。

   これまで好業績だった企業や大企業でさえも世界規模の津波に飲み込まれてしまうほど事態は深刻だ。急激な受注減にどこまで耐えられるか。ドイツ経済の真価が問われている。

   Ifo経済研究所の予測は2009年の国内総生産がマイナス2,2%、2010年がマイナス0,2%と極めて悲観的だ。他の経済研究所や金融機関も経済予測を大幅に下方修正している。

   しかし、悲観的シナリオで国民の不安を煽るのは得策ではあるまい。その心理作用は政府の景気刺激策には逆効果だ。危機をチャンスと捉えてドイツ経済の構造改革を進めることができれば、次の世代の負担は軽減される。選挙のためのばらまき政策ではなく、未来志向の賢い政策を期待したい。

   それにしても、 経営の失敗を棚に上げて、当然かの如く国に救済を求める金融機関や大企業のトップマネージャーたちの浅ましさには憤りを覚える。なぜ、彼らの法外な報酬を税金で保証しなければならないのか。責任転嫁するばかりで、自責の念が見られない。

   スイスの銀行UBSがトップマネージャーに対する新しいボーナス制度を導入すると発表したが、当然の対処だろう。会社の短期的業績だけでなく、中期的業績も考慮したものとなっている。

  米国企業の法外な報酬に目線を合わせてきたドイツ企業のトップマネージャーたちは、国に助けを求める前に、役員報酬体系を見直し、経営責任を明確化すべきなのではないか。経営者の責任と信頼できる改善策が明示されない限り、納税者は公的資金の投入を納得できない。

   メディアは盛んに「金融危機」や「景気後退」を報道しているが、買い物客で賑わうクリスマス市やクリスマス商戦真っ只中の小売業を見る限り、金融危機の翳りはまだ感じられない。

   景気後退の波が庶民の生活にまで及ぶのは2009年に入ってからのようだ。ドイツ経済は2009年が最も厳しい年になりそうである。しかも2009年は総選挙の年でもある。2009年をいかに乗り切るか。政治家にとっても企業にとっても試練の年になることは間違いない。

   ミュンヘンも寒さが厳しくなってきた。二重の意味で、“Wir müssen uns warm anziehen !“

   何はともあれ、楽しいクリスマスと良いお年をお迎えください。

2008年12月15日)

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