オバサンの独り言

 

 ミュンヘンにも春が来た。5月のカレンダーを見ていたら、「母の日」が第一日曜日の 5月 4日になっているので驚いた。「母の日」は 5月の第二日曜日のはずだが・・・。今年の「母の日」ではちょっとした騒動があったようだ。

 ドイツが「母の日」を導入したのは1922年で、最初の「母の日」は19235月13日。花屋さんの団体が「お母さんに花を贈って感謝しよう!」と呼びかけたのが始まりらしい。だから、「母の日」に花は欠かせない。1949年には 5月の第二日曜日を「母の日」と定め、祝日の花の販売を特別許可することになった。

 ドイツ小売業連盟によると、ドイツ人の「母の日」のプレゼントの予算は一人当たり平均で25ユーロだという。最近ではプレゼントの種類も豊富になったが、依然として「花束とカード」が最も多い。それに加えて、家族みんなで外食やハイキング、サイクリング、日帰り旅行を楽しむのが一般的なようだ。

 ところが、今年の 5月の第二日曜日は「母の日」と「聖霊降臨祭の日曜日(Pfingstsonntag)」が重なってしまった。キリスト教の重要な祭日である「聖霊降臨祭の日曜日」は閉店法により営業が禁止されている。

 「母の日」の花の売上は 1億ユーロを超えるという。花屋さんにとって 1年で最も売上のある日だ( 2位はバレンタインデー)。花屋さんが「母の日」の営業禁止を黙って受け入れるはずがない。聖なる祭日の営業禁止を主張する教会と「母の日」の特別営業許可を主張する 花屋さんの団体、閉店法を管轄とする州政府の間で激しい論争が展開された。

 閉店法で「聖霊降臨祭の日曜日」の営業を禁止する州があることから、1949年以来、この祭日と「母の日」が重なる年は代替日曜日を「母の日」にすることが認められている。この規定に則って、2008年は 5月の第一日曜日、すなわ ち 5月 4日を「母の日」にする予定だったらしい。

 ところが、ほとんどの州が花屋とパン屋に特別営業許可を認めることにしたため、例年通り、第二日曜日、すなわち 5月11日に「母の日」と「聖霊降臨祭の日曜日」の両方を祝うことになったのである。この最終決定が下される前に印刷された2008年度カレンダーの「母の日」は 5月 4日のままというわけだ。私のカレンダーもその一つだった。

 このような経緯を経て、5月11日は「聖霊降臨祭の日曜日」であるが、花屋さんとパン屋さんには特別営業許可が与えられる。「聖霊降臨祭の日曜日」に新鮮な花や焼き立てのケーキを買うことができるのは初めてのことだそうだ。いかにもドイツらしい。

 閉店法は州法であるため、州ごとに営業時間が異なるが、ブランデンブルク州(一部の市町村では営業可能)とバーデン・ヴュルテンベルク州(完全に営業禁止)を除く14州では、数時間の営業が認められる。最寄の花屋さんやパン屋さんの営業時間を事前に確認しておいた方がよいだろう。

 ドイツ小売業連盟は、「花のない母の日は卵のないイースターのようなもの」だから、「母の日」の花束配達サービスを利用するようバーデン・ヴュルテンベルク州民に呼びかけている。サービス精神旺盛というか、商魂逞しいというか・・・。

 ところで、ドイツは 5月 1日(木)が「父の日」であることをご存知だろうか。今年は 5月 1日に 3つの祝日、すなわち「メーデー」、「キリストの昇天(復活祭後40日目)」、「父の日」が重なっている。ドイツの「父の日」は「キリストの昇天」の祭日と定められている。

 ドイツでは、「父の日」は通称「男の日」と呼ばれ、男だけでハイキングやサイクリングをし、酒を飲む風習がある。だから、この日はどこの酒場も男たちばかり。川原でバーベキューをしながら酒を飲んでいるのも男だけのグループが多い。最近の若い世代のお父さんたちは家族と一緒に「父の日」を過ごすようだが。

 「母の日」に比べて、「父の日」は影が薄く、忘れられがちだ。今年のように 3つの祝日が重なれば、なおさらだ。母は強し。男は黙って酒を飲む・・・・・か。

2008年4月30日)

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