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ドイツの若者は東ドイツの歴史を知らない

  ベルリンの壁が崩壊してから19年が経った今、ドイツの若者は東ドイツ、すなわちドイツ民主共和国(DDR)の歴史を知らないことがベルリン自由大学の調査で明らかになった。同大学はバイエルン州(西独)、ブランデンブルク州(東独)、ノルドライン・ヴェストファーレン州(西独)、ベルリン都市州(東西)の若者(15歳~17歳)約5200人を対象に調査を行った。

   例えば、4人に1人は、西ドイツの旧首相ヴィリー・ブラントを著名なDDR政治家だと回答した。また、東ドイツの国家評議会議長エーリヒ・ホーネカーの下で民主的選挙が行われたと答えている。

   大半の生徒は、誰が1961年にベルリンの壁をつくらせたか知らなかった。多くの生徒が西ドイツないし連合国だと思っていた。旧東独の生徒のほぼ半分、旧西独の生徒の約3分の1は、「DDRは独裁ではなかった。国民は他の国と同じように適応しなければならなかっただけだ」と見ている。多くの生徒は、独裁制と民主制の違いすら知らなかった。

   旧東独でも旧西独でもハウプトシューレ(基幹学校)とレアールシューレ(実科学校)の生徒の方がギムナジウム(高等学校)の生徒よりもDDRをポジティブに評価している。ハウプトシューレとレアールシューレの生徒では、極めてネガティブなDDR像を持っている人は約40%に過ぎなかった。旧西独ではDDRのテーマが学校の授業で扱われており、生徒はDDRを批判的に評価している。

   州別に見ると、バイエルン州の生徒が最もよくDDRについて知っていた。ブランデンブルク州のギムナジウムの生徒よりもバイエルン州のハウプトシューレの生徒の方がDDRについて知っている。

   「国家保安機関(Stasi)は他の国におけるように、普通の秘密情報機関だった」とする言明を否定したのは、ブランデンブルク州では生徒の45%だけだった。ノルドライン・ヴェストファーレン州では否定した生徒は57%、バイエルン州では62%。ブランデンブルク州では、DDRに死刑があったことを知っている生徒が17%にすぎなかった。

   研究者によると、「無知な人ほどDDRをポジティブに評価している」という。しかも、歴史的事実をほとんど知らない若者はDDR独裁を瑣末視する傾向にある。但し、旧西独と旧東独では大きな相違が見られる。旧東独の生徒の多くは、ドイツ社会主義統一党(SED)の国家の独裁的かつ抑圧的な面を見ることなく、その社会的観点を褒めている。旧西独の生徒も同様に、生活の社会的次元を褒めているが、独裁は批判している。

   旧東独の学校では、親や祖父母が授業だけでは克服できない障害になっているという。教師が批判的に考察するDDR像を親や祖父母が否定し、自分のノスタルジー的DDR像を子供に押し付けていることを研究者は指摘している。

   研究者は学校に対して、DDRのテーマをもっと授業で扱うように求めている。また、来年と再来年はベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一の20周年の年に当たるので、ドイツ統一前の歴史をもっと詳細に授業で取り扱うよう勧告している。

2008年7月29日)

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