オバサンの独り言

 

   日本は「タイガーマスク運動」という明るいニュースで新年を迎えた。今度はどこに、どんなタイガーマスクが現れたのだろうと、毎日ニュースを見るのが楽しみになった。こんなに心温まる話題は久しぶりである。

   昨年1225日に前橋市で「伊達直人(タイガーマスク)」さんが児童相談所に10個のランドセルを寄付したのがきっかけとなり、それに共感した全国のタイガーマスクが児童養護施設や市町村に次々と贈り物をしているのだ。

   善意が善意を呼び、連鎖反応の如く、あっという間に全国に広まった。プレゼントもランドセルだけでなく、文具、玩具、お菓子、お米や野菜、商品券、現金など様々だ。匿名寄付者の名前 も色々なキャラクターに変わった。小さな善意がどんどん多様化している。

   批判もあるようだが、これまで関心を持ってもらえなかった児童養護施設の子供たちが恩恵を受け、喜んでいるのだからうれしいことではないか。

   一過性の思いつきなのか、自己満足なのか、便乗なのか、善意か偽善かなどと勘ぐる必要はない。要は寄付の動機ではなく、有効な活用と成果なのだから。寄付とはそういうものだ。どんなに純粋な根拠があっても有効に活用されなければ意味がない。

   タイガーマスクは児童養護施設で暮らす子供たちと施設で働く人たちのことを考える機会を国民と政治家にもたらしてくれた。年末年始にみんなが温かい明るい気持ちになれたのだ。その善意に感謝こそすれ、批判する筋合いではない。

   私はこの “マンガ的な“ 慈善運動は極めて効果的な寄付活動だと感心している。○○団体や○○協会の募金の場合、寄付金の使い道への不信感から寄付に消極的な人が多いと思う。タイガーマスク運動は寄付先も目的も用途も実に明快で個人的かつ直接的である。悪用を心配する必要がない。施設が必要としている物を事前に聞いてから寄付したタイガーマスク賛同者もいるという。これほど効果的な寄付があろうか。

   そして、匿名寄付者のキャラクターがいい。寄付者のメッセージを代弁している。このマンガ的コミュニケーションが堅苦しい寄付へのためらいを克服させたのではないだろうか。日本のマンガ文化の効用といえよう。

   ドイツでは年末になると、教会や社会福祉団体、テレビ局、新聞社などが募金活動をする。ミュンヘンに本社のある南ドイツ新聞は毎年年末に、恵まれない人々に関する記事を連載して寄付金を集め、援助をしている。2010年末は62回目で、約500万ユーロ集まったという。

   国内外で大きな自然災害があればすぐに義援金口座が開設され、各団体が募金活動をする。メディアも積極的に報道する。ドイツにはキリスト教精神に基づく寄付文化があるのだ。寄付金が有効に活用されているか否かは別問題として・・・。

   日本には欧米のような寄付文化はないかもしれないが、地道に慈善活動をしている人は決して少なくない。マスコミがあまり注目しなかっただけだ。今回のようにマスコミが積極的に報道して、後押しすれば、慈善活動が見直され、定着する可能性もあるのではないだろうか。

   だから、今後のメディアの役割は重要だと思う。マスコミ報道こそが一過性に終わらないことを願わずにはいられない。

   タイガーマスクは「子供たちに何かをしてあげたい」と密かに思っていた人々にきっかけをつくり、背中を押してあげた。日本的な遊び心のある慈善活動、大歓迎ではないか。従来の形態とは異なる、機知に富んだ表現方法があっていいと思う。善意に堅苦しい理屈はいらない。気軽にできる身近な活動になればいいのだ。

   ドイツのクリスマス募金活動のように、今年の年末も再びタイガーマスク賛同者が日本全国に出現して、善意を配ってくれることを願っている。

   どんなキャラクターがどこにどんな贈り物を運んでくるのか、今から楽しみである。

2011年1月25日)

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