オバサンの独り言

 

   経済諮問委員会が少子高齢化を理由として定年退職年齢を2045年までに68歳に、2060年までに69歳に引き上げるよう提言した。現行法では、2012年から2029年までの期間に段階的に現在の65歳から67歳に引き上げることになっている。

    野党や労働組合が未だに67歳への引き上げに反対しているのに、さらに69歳に引き上げるというのだから思い切った提言といえる。それほど少子高齢化が深刻な問題だということだろう。

    年金保険と疾病保険を抜本的に改革しない限り、ドイツ人は現在の生活水準を維持することはできない。モデル計算は悲観的だ。

    同委員会は、「豊富な経験が理解力や体力の低下を補うので平均的な生産性はほとんど変わらない」という最近の調査結果を指摘する。但し、瓦職人のような肉体労働職種には特別規定の検討が必要だとしている。当然のことである。

    現在、法定年金受給年数(年金受給開始から死亡まで)は平均で18,2年間である。1960年は10年だった。若い就業者の年金負担は重くなるばかりだ。

    医療技術の進歩のおかげで平均寿命が延び続けている。今の60代は昔と比べると心身ともに比較にならないほど元気だ。まだまだ現役で働ける人が多い。問題は、「67歳まで(あるいは69歳まで)働く職場を保証してくれるのか」という点である。

    58歳以上の社員がどんなに仕事を続けたくても企業が本人の意思に反して早期退職制度を適用し、早期退職させているのが大手企業の現状であり、58歳以上の人が新しい職場を見つけることはほとんど不可能だ。早期退職に追い込まれた人は年金の削減を甘受しなければならない。政治家がどんなに美辞麗句を唱えても年金受給開始年齢の引き上げは実質的な年金削減なのである。

    2010年3月現在、64歳で社会保険加入義務のあるフルタイム勤務をしている人の割合は男性が8,3%、女性が3,4%だった。63歳でも9,2%に過ぎない。

    連邦統計局によると、2009年の就業率は60歳〜64歳が38,7%、64歳が23,7%、65歳が11,6%だった。65歳以上で仕事を続けている人は極めて少ない。これが現実なのだ。 

    専門職不足がクローズアップされ、政治家も専門家も経済界も口を揃えて移民政策の転換、専門資格を有する外国人の移入促進を訴えている。

    国内の潜在的労働力、すなわち女性と高齢者の活用も議論されているが、58歳以上の専門職の人を採用する会社はほとんどない。58歳以上の専門職社員を早期退職させる一方で、専門職不足を訴えている大手企業の矛盾には怒りさえ感じる。

    しかし、発想の転換は企業だけでなく、労働組合にも求められている。60歳を超えれば体力的な衰えは隠せない。集中力も低下するだろう。例えば60歳以上の社員の勤務時間を短縮し、相応に(高い)給与を削減したり、仕事の内容を変えるなど、60歳以上の社員の勤務・給与体系を根本的に見直せば、この年代の労働力を十分に活用できるのではないか。労使がもっと柔軟に雇用システムを少子高齢化に適応させれば、専門職不足も年金問題もかなり改善できるのではないだろうか。

    連邦政府は早期退職者が法定退職年齢に達するまでの期間に認められる追加収入枠(現在は月額400ユーロ)を引き上げることを検討している。削減された年金分を追加収入で補えるようにする措置を評価したい。もちろん、追加収入を得る仕事があればの話であるが・・・。

    年金受給開始年齢を引き上げるのであれば、本人の意思に反する(解雇で脅す)早期退職を禁止するとともに、追加収入で補える道を開くことが不可欠である。政治家も企業も労働組合もイデオロギーに囚われることなく、少子高齢化社会に適応した新しい雇用体系を柔軟に構築してほしいと願う。

    昔は、「ドイツ人はどうしてあんなに喜んで定年退職するのだろう」と不思議に思ったものだ。ドイツ人に「第二の就職」という言葉はなかった。

    ドイツ人の「豊かな年金と悠々自適の年金生活」は少子高齢化社会では夢物語になりつつあるようである。

2011年5月24日)

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