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連邦内閣、性刑法改正を閣議決定

   

    連邦内閣は917日(水)、子供の保護を目的として性刑法を厳しくする刑法典改正案を閣議決定した。

    刑法典改正案の要旨は次の通りである。

    1. 時効が延長される(刑法典78b)。性犯罪の時効は被害者が30歳になるまで休止する。現行法では21歳まで休止。性犯罪の刑法上の時効は、特に子供の性的虐待において、被害者が30歳になった時点から開始する。従って、重い性犯罪(時効期間20年)は被害者が50歳になる前に時効になることはない。

    2. 撮られた人に著しい損害を与える写真・画像、衣服を着けない人(特に子供)を撮った写真・画像を、それが住居ないし保護された部屋の外であっても、無権限で作成、転送、頒布することは処罰される(刑法典201a)。特に児童と青少年において、その人格権の侵害の下に撮られた裸体写真・画像の作成、転送、頒布も処罰される。児童及び青少年の裸体写真・画像の交換も処罰対象となる。

    3. 被保護者及び青少年の性的虐待の犯罪構成要件が拡大され、社会的依存関係も適用される(刑法典174条)。例えば、加害者が被害者の代理教員であるケースにも適用される。

    4. 児童・青少年わいせつ物の概念における「衣服の全部又は一部を着けない児童の不自然に性を強調する姿態の写真・画像」(Posing)は処罰される(刑法典184b184c)。現行法でも「わいせつ物」の概念に含まれる児童・青少年の不自然に性を強調する姿態の写真・画像が罰せられるが、新規定の可罰性ではポーズが能動的である必要はない。例えば、そのような姿態で寝ている子供の写真・画像も処罰される。

    5. サイバーグルーミングは処罰される(刑法典176条)。現行法では、「わいせつ物」(原則的に記憶媒体だけ)が被害者に影響を与えた場合にのみ可罰性がある。新規定では、「わいせつ物」だけでなく、すべての近代的な情報通信形態に適用される。例えば、電話回線のようなデータ回線だけの情報伝達の場合にも可罰性がある。

    6. 児童ポルノわいせつ物の所持に対する刑量は最高2年から最高3年に引き上げられる。

    マース連邦法務大臣は、「児童ポルノは性的虐待である。子供はそのような暴力に対して身を守ることができず、心的外傷を受ける。法改正は性犯罪被害者の保護を改善する」と語った。

    特に児童と青少年の裸体写真・画像の無権限の作成、頒布が処罰される。但し、多くの親が日常生活で撮る子供の写真・画像(浜辺での写真・画像など)は犯罪の対象にならないという。「ネットいじめ」に対する保護も改善される。

    この改正案に対して、法曹界は、単なる子供の裸の写真・画像が処罰されることを厳しく批判している。可罰性の範囲が広がりすぎているという。子供の誕生会の水遊びで撮った個人的な写真までもが罰せられる可能性があると懸念している。新規定では、近所の子供の写真を撮る場合でもその親の同意が必要になる。

201410月14日)

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